写真は私たちがテキストにしている「素問・霊枢」です。
もちろん、本物ではありません。明時代のものです。
本物はおよそ3000年前に編纂されています。
「易経」という哲学書に含まれています。
「易経」は天体観測や地球の自然現象を観察することで体系化された古代自然科学です。
科学といっても、人倫、哲学といった人の道も説いています。
そこで「素問・霊枢」医学もまた自然科学・人倫・哲学に基づいています。
「素問・霊枢」では、人の心身の様々な現象が自然現象と同じシステムで起きていることを解明しています。
水は地中から湧いて小さな川となり、やがて大河へ成長し、海へ注ぎます。
太陽に照らされて海から水蒸気が昇って上空へ行き、水滴となって雲を形成し、雨となって地表に降りてきます。
同じ循環が人の身体でも起きています。
それは「気」という言葉で表現されています。
「気」は私たちの頭と足の間で水のように循環しています。
地球環境は太陽の熱で温められて風が吹いたり、水蒸気で湿度が生じたり、反対に乾いたり、太陽から遠ざかって冷たくなったりします。
暑くなればなるほど、風が強くなればなるだけの影響が起き、湿度が高くなればなるほど、乾燥がひどくなればなるほど、冷たさが極まれば極まるほど、みなそれぞれ影響を起こします。反対の場合も同じです。
これらは人の心身にも同様に起きています。
これを「気の偏在」と呼んでいます。
暑くなり過ぎればそういう病気が起こり、風が吹き過ぎれば、湿度が高過ぎれば、乾燥し過ぎれば、冷たくなり過ぎれば、病気になってしまいます。
暑気、風気、湿気、燥気、寒気の偏在、強いては気の偏在が病気の根本的な原因なのです。
暑くなり過ぎないように、風が吹きすぎないように、湿度が高まりすぎないように、乾燥しすぎないように、冷たくなり過ぎないようにしなければなりません。反対の場合も同じです。
川が氾濫すれば自然破壊が起こるように、気が氾濫すれば人の心身にも病気が起こります。
川が枯れれば生き物は生きていけないように、私たちも気が枯れないようにしなければ生きていけません。
川の氾濫を治めることが破壊を防ぐように、人の病気も気を治めることが重要です。
多ければ減らし、足りなければ補うのです。
頭と足の間で主に12本の気の流れがあります。
それぞれの流れがゆったりといつものように流れていれば何も起こりません。
気の流れには全身に約360個のツボがあり、それぞれ個性を持っています。
そうすることで病気を治していきます。
これが「素問・霊枢」医学です。
気の流れが調うと、私たちはとても快適で幸せな気分になります。
もちろん若く、美しくなります。